賃金の定義(Definition)
“賃金(Wages)”とは、呼び方や計算方法に関係なく、過去の労働または未来の労働に関連して従業員へ支払われるべき全ての報酬、収入、チップ、サービス料のことを指します。
各種手当(出張手当、皆勤手当、コミッション、残業手当)は、賃金に含まれます。
ただし、以下のものは賃金に含まれません。
雇用主が提供している住居、教育、食事、燃料、水、医療処置の価値
雇用主が積み立てた退職基金
特に根拠なく支払われた、または雇用主の自由裁量によって支払われたコミッション、皆勤手当、皆勤ボーナス
繰返し支払われるものではない出張手当や、交通割引の価値、雇用されていることで実際に支払った費用に対する出張手当
業務の中で使った特別な経費を支払った従業員への支払いの合計額
年末手当や、特に根拠なく支払われた、または雇用主の自由裁量によって支払われた毎年のボーナス
雇用契約の満了時または解除時に支払われる心づけ
次の項目が計算される際は、上記「賃金」の定義が用いられます。
年末手当
産前産後休暇手当
解雇補償金
長期服務金
傷病手当
休日手当
年次有給休暇手当
次の条件に当てはまる場合、残業手当を「賃金」に含める必要があります。
残業手当の支払いが、恒常化している場合
過去12箇月間において、平均月額残業手当が、平均月額賃金の20%以上を締めている場合
賃金控除(Deductions from Wages)
次の状況を除いては、雇用主は従業員から賃金を控除することを禁止しています。
仕事を欠勤したことによる控除。控除すべき合計額は、仕事を休んだ時間に応じた割合によらなければいけません。
従業員の怠慢や過失によって、雇用主の商品、備品または資産を破損または消失させたことによる賃金控除することができます。ただし、いかなる場合であっても、賃金控除の合計額は、損失または消失した価値と同等である必要があり、その金額はHK$300を超えてはいけません。全ての賃金控除額の合計金額は、賃金算定期間に従業員に支払われる賃金の4分の1を超えてはいけません。
従業員に前払いや過払いをしたことによる返金のために、賃金控除をすることができます。ただし、賃金算定期間における従業員に支払われる賃金の4分の1を超えてはいけません。
雇用主が従業員に提供する食事費用と住居費を控除することができます。
従業員が書面で要求する場合、雇用主は、従業員が退職制度、MPF、退職金制度、医療給付制度または貯蓄制度に拠出した金額を賃金から控除することができます。
従業員の書面による同意を得なければならなりませんが、雇用主が従業員に貸与した金額を賃金から控除することができます。
従業員が必要書類を提出する前に、雇用主が父親の育児休暇手当(Paternity Leave Pay)を従業員に支払ったが、従業員が育児休暇1日目から3箇月以内に必要書類を雇用主に提出しない場合、または必要書類を提出しないまま雇用契約が解除された場合、支払った育児休暇手当を控除することができます。
雇用主は、法律に基づいた要求または要請があれば、賃金を控除することができます。
雇用主は、裁判所が発行した所得差押令状(Attachment of Income Order)に従って、従業員が未払いにしている維持費を控除することができます。
上記項目9の控除より、1~8の項目が優先して控除されます。
労工処所長の書面による承認がない限り、賃金算定期間おいて、欠勤控除と未払い維持費の控除を除いて、賃金の2分の1を超えた控除をすることはできません。
賃金控除の違反と罰則(Offences and Penalties)
違法に賃金を控除した雇用主が告発されて有罪となった場合、最大10万ドルの罰金および最長1年間の懲役に処せられます。
賃金支払い(Payment of Wages)
賃金は、賃金算定期間の最終日の満了時点が支払い期限となります。雇用主は、従業員に対して、賃金算定期間の最終日から7日以内に賃金を支払う必要があります。期限までに賃金を支払われない場合、雇用主は未払い賃金に対する利息を払わなければなりません。
賃金不払いの違反と罰則(Offences and Penalties)
従業員に賃金を支払わなかった雇用主に故意があった場合や、正当な理由がない場合、もし告発されて有罪となれば、最大HK$35万の罰金および最長3年間の禁固刑に処せられます。
未払い賃金の利息を払わない雇用主に故意があった場合や、または正当な理由がない場合、告発され有罪となれば、雇用主は最大HK$10,000の罰金に処せられます。
雇用主が期日までに賃金を支払わなかった場合(Failure to Pay Wages)
雇用主が期日までに賃金を支払うことができない場合、雇用契約の条件の下で直ちに従業員と雇用契約を解除しなければなりません。
支払期日から1ヶ月以上過ぎても賃金を受け取れなかった従業員は、雇用者の雇用契約を解除することができます。その場合、雇用主は従業員に対して、法律および雇用契約で規定された支払いに加えて、雇用契約の解除予告手当を支払う必要があります。 争いを避けるために、従業員が、この条項によって雇用契約を解除する場合、雇用主にその決定を通知する必要があります。
下請け業者の従業員に対する賃金支払い責任(Liability to Pay Wages of Sub-contractor’s Employees)
元請業者、上位下請業者、および上位指定下請業者は、下請業者または指定下請業者に雇用されている従業員の最初の2箇月分の未払賃金に対して責任を負います。
下請業者または指定下請負業者に雇用されている従業員が、期日までに賃金を受け取れなかった場合、60日以内(または労工処長が追加期間を許可した場合は90日以内)に、従業員は元請業者または主要な指定下請業者に対し、書面によって通知しなければならない。この場合、従業員が出す通知書の中には、次の事項を記載しなければなりません。
従業員の氏名および住所
雇用主の名称および住所
従業員の雇用場所の住所
未払い賃金の対象となる仕事の詳細
未払い賃金の金額と、その算定期間
元請業者、上位の下請業者、上位の指定下請業者は、通知を受けてから30日以内に従業員に対して給与を支払う必要があります。 これらの業者は、すべての上位下請業者または上位指定下請業者に対して、従業員への支払い責任を分担するよう要求することができます。
元請業者、上位の下請業者、上位の指定下請業者が支払った賃金は、従業員の雇用主が支払うべきものです。この債務を回収する場合は、民事訴訟手続きによります。